◆ 連 載 余 話  「お国自慢のすすめ」2003.09


「川俣町へ、篠山市議会の一行が視察研修に行かれるそうですよ」・・・・連載(まちおこし
+まちづくり)執筆者の竹内さんから連絡を受けたのは2003年5月上旬のこと。えっ、
あの川俣町?!と驚いたのは、たまたま「郷友」408号(5月発行)のテーマが、その町
だったからである。前後の事情について、一筆を竹内さんにお願いした。(編集長・山口)



「まちおこし+まちづくり」の連載・第5回:福島県川俣町の掲載された「郷友」がそろそろ
送り届けられるだろうと思っていた5月初旬、川俣町の産業振興課の課長さんから思い
がけぬ電話を受けました。
「来たる5月27日に、篠山市議会議員団の方が、まちおこしの視察研修に、うちの川俣
町へお見えになりますよ。先ほど依頼の電話がありました。」

● 視察のきっかけは「全くの偶然」

第5回では、「川俣町は、絹の機織(はたおり)、全日本中南米音楽際(コスキン祭)、そ
れに軍鶏(しゃも=戦闘的な性格の鶏のようなもの)の食肉加工販売の3つでまちおこし
を図っている」と報告しました。主にこの食肉加工販売の現場視察だそうです。若い?
篠山市議会事務局の方は「郷友」の存在すらご存知ないようで、インターネットで見つけ
たとのこと。もちろん、市議会の幾人かは郷友の会員でしょう。従って、川俣町への視察
の話は「全くの偶然」です。

● お国自慢は聞き苦しくない

それにしても、川俣町の課長さんが、よくぞ私が「丹波篠山の出身」だと覚えて頂いてい
たものです。課長さんに脱帽です。私はどこにお邪魔しても「故郷を誇らしげに喋りまくっ
ている」のでしょう。誰かの言葉に、「世の中で、自慢話ほど聞き苦しいものはないが、た
だひとつ、例外がある。それはお国自慢である」という名言があります。この言葉を胸に
全国どこへでも出かけます。私はいつしか「篠山という誰にでも羨ましがられる故郷をも
っている」と明確に自覚するようになりました。

● 川俣町と私

川俣町産業振興課の方々とは、私がまちおこしの専門家として、一緒に数年にわたり町
全体を俯瞰しながら、何度も検討を繰り返してきた仲間です。前回の「道の駅・川俣やお
りもの体験研修館」の基本構想は、その中から派生してきました。また、このコンサルタ
ントと建築の設計者は明確に分けられます。しかしながら、担当課の方々から町長さん
に、私を「設計者に」と篤く推薦して頂きました。お蔭さまで、議会の承認を得て公共建築
では稀な「特命」で設計・監理をさせていただいたのです。

●「地産地消」の現場と「おりもの体験」

視察当日の5月27日、この課長さんが先頭に立って、篠山市議会議員団の方々を第三
セクター・農業振興公社に案内されました。別名「愛菜館(あいさいかん)」は、年間5千
万ほどの売上があります。ここでは、(1)生産者+(2)経営者+(3)行政(産業振興課)の三
者の連携と協働で大きな成果を上げています。軍鶏の「生産・加工・販売の一貫性」に加
え、「農産物への付加価値」、「地産地消」(地元で生産し消費する)という地域密着型の
新しいまちおこし事業です。

そのうち(1)軍鶏生産農家は、高齢者の頑張りによります。その代表・佐藤治氏は、繭の
生産高日本一の個人記録保持者です。一行は驚きの目で見られたようです。そのあと
は、私たちが懸命に考えたコースを辿られました。道の駅・川俣や「おりもの体験研修
館」で機織(はたおり)と草木染めを実演案内され、銘品館で軍鶏そばを賞味し、買物も
楽しまれました。

言い忘れていました。視察前日5月26日夕方、川俣町に入られた篠山市の一行は、震
度5の「宮城県沖地震」に遭遇されました。8年前に神戸の北側で大地震を体験したば
かりの方々です。こんな「偶然の重なり」というおまけつきの視察でした。以上、郷友会員
にとっては何でもないような、しかし、私にとっては「偶然の重なりと驚き」とも言うべきトピ
ックでした。

● 蛇足として

貴重な誌面をお借りして、この機会に提案とお願いを3つ申し上げます。
一つは、百年以上の伝統をもつ稀有な機関誌「郷友」を、会員のみならず、全国に発信・
PRしていただきたいことです。今回の経験から、地域間の交流にも役立つのではないか
と思いました。篠山に関連ある外部の方に、寄稿願うのも一考でしょう。
二つには、篠山市議会はじめ、商工会、JC、観光協会から、連載・第2回に登場した「小
布施」への視察研修を強くお勧めします。小布施の方々は、「私たち丹波の先人から、遠
く鎌倉時代に栗の苗木を贈られ、地域振興に役立った」ことを覚えていらっしゃいます。
栗の研究と観光で、栗のブランドは今や確実に小布施になっています。七百年前とは逆
に、小布施堂や観光協会から示唆を得られること、うけあいです。
最後に、皆さん、大いにお国自慢をしましょう!


篠山市議会一行

「おりもの体験研修館」
前にて、上月格男氏
(<郷友会員)ほか
篠山市議会新政会一行
右から二人目が
川俣町産業振興課長
=佐久間恒司氏



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